「もう一枚パンツを持っていく」IBSのリアルと安心感
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「もう一枚パンツを持っていく」という行動の意味
出かける前にバッグの中を確認する
財布、携帯電話、鍵、ハンカチ、ティッシュ――そして、予備のパンツ。
IBS(過敏性腸症候群)を抱える人にとって、予備の下着を持ち歩くことは外出するための必須条件のようなものです。
それは単なる「念のため」ではなく、心の安定を保ち、自信を持って外出するための重要な儀式なのです。
IBSと予期不安の深い関係

日本では成人の約10〜15%がIBSに悩んでいると言われており、特に20代から40代の働き盛りの世代に多く見られます。
IBSの最も厄介な点
症状の予測が難しいこと
- 朝は調子が良くても、外出先で急にお腹が痛くなる
- 大切な会議の前に限って症状が出る
- 「また同じことが起きたらどうしよう」という予期不安が生まれる
- 外出すること自体がストレスになってしまう
脳腸相関:脳と腸の密接な関係
脳と腸は、迷走神経などを通じて密接にコミュニケーションを取っています。
悪循環のメカニズム:
- 過去にトイレが間に合わなかった経験が脳に強く刻まれる
- 次回外出する際に「またあの時のようになったらどうしよう」という不安が湧く
- この予期不安自体が、実際に症状を引き起こしてしまう
- 不安で自律神経が乱れ、腸の動きが活発になる
- 実際に腹痛や下痢が起きてしまう
ここで重要になるのが、「コントロール感覚」の回復です。
予備パンツが提供する心理的安全性
予備のパンツを持つことが、なぜこれほど大きな安心感をもたらすのか。その心理的なメカニズムを見ていきましょう。
① 最悪の事態への備え
「たとえそうなっても大丈夫」という安心感。具体的な備えがあることで、心に余裕が生まれます。
② 自己効力感の向上
「自分は準備ができている」「対処法を知っている」という感覚が自信につながります。
③ 注意の分散
備えがあることで「トイレは大丈夫か」という心配から解放され、外出本来の目的に集中できます。
④ 儀式的な意味
パンツをバッグに入れる行為自体が「これで準備完了」という心理的な区切りとなります。
実際の持ち歩き方と工夫
パッキング方法の工夫
収納場所の選び方
- バッグの底:定位置として把握しやすい。ただし取り出しにくい
- サイドポケット:素早くアクセス可能。落下に注意
- 内ポケット:プライバシーを守りながら比較的アクセスしやすい(おすすめ)
持ち歩く枚数
推奨枚数:
- 通常の外出:1枚で十分
- 長時間の外出や旅行:2〜3枚で安心感アップ
- 季節の調整:夏場は汗対策にも。冬場は薄手のものを選ぶ
男性用吸水パンツという選択肢
予備のパンツを持ち歩く代わりに、あるいは併用して、男性用の吸水パンツ(尿漏れパンツ・失禁パンツ)を活用するという選択肢があります。
吸水パンツの最大の利点
「すでに履いている」という安心感
予備のパンツは、何かあった時に「トイレで着替える」必要がありますが、吸水パンツは軽い症状であればそのまま対応できます。
現代の吸水パンツの特徴
見た目と機能の進化:
- 外見:通常のボクサーパンツとほとんど変わらない
- 履き心地:快適で、長時間着用可能
- 構造:多層構造で、表面は肌に優しく、中間層は高吸水性、外側は防水層
- 通気性:蒸れにくい設計で長時間でも快適
-
抗菌:衛生面でも安心
実際の使用シーン
通勤時:満員電車で「万が一トイレが間に合わなくても大丈夫」という安心感
会議中:途中で離席しにくい状況でも、心の余裕が生まれ本来の仕事に集中できる
旅行・長距離移動:すぐにトイレに行けない状況での強力なサポート
夜間:安心して休息を取ることができる
外出先での具体的な対処法
トイレの確保
事前準備のポイント:
- スマートフォンのマップアプリで「トイレ」と検索
- 駅のトイレ、コンビニ、デパートなどの位置を把握
- 多目的トイレは着替えスペースが広く、プライバシーも守られる
着替えが必要になった場合の手順
- 落ち着いて個室に入り、ドアをしっかりロック
- ウェットティッシュで体を清潔に(流せるタイプが便利)
- 汚れた下着をビニール袋に入れる(二重にすると臭い漏れ防止)
- 新しい下着に着替え、深呼吸を数回
- 消臭スプレーを使用(小さな容器に入れて持ち歩く)
ストレス管理
その場でできるリラクゼーション法:
- 4-7-8呼吸法:4秒吸う→7秒止める→8秒吐く(4回繰り返す)
- 筋弛緩法:肩や顔の筋肉に力を入れて、ゆっくり緩める
- マインドフルネス:今この瞬間の感覚に意識を向ける
職場や学校での対策
環境を整える
- 座席選び:可能であればトイレに近い席を選ぶ
- 上司や担当者への説明:IBSは正式な疾患。適切な配慮を求める権利がある
- デスクに緊急キット:予備パンツ、ウェットティッシュ、消臭スプレーなどをまとめて
会議やプレゼンテーションの対策
- 重要なイベントの前日は、消化に良い食事を選ぶ
- 会議室の出入口に近い席に座る
- 事前に「体調により途中退席する可能性がある」と伝えておく
旅行や長距離移動の準備
計画段階からの対策
心理的な成長とポジティブな視点
IBSと向き合う中で、「予備のパンツを持つ」という行動を、ネガティブなものではなく、自己管理の一形態として捉え直すことができます。
予備パンツを持つことは「賢明な準備」
- 登山家が予備の装備を持つように
- 長距離ドライバーが予備のタイヤを積むように
- IBSを抱える人が予備のパンツを持つことは、状況を理解し適切に備えている証拠
「恥ずかしい」という感情から、「自分をよく理解し、適切にケアしている」という誇りへ
医療的アプローチとの併用
予備のパンツや吸水パンツは実用的な対処法ですが、医療的なアプローチと併用することで、より効果的な管理が可能になります。
医療的サポート
- 消化器内科・心療内科:薬物療法、症状に応じた処方
- 認知行動療法(CBT):予期不安に対する考え方や行動パターンを改善
- マインドフルネスに基づくストレス低減法:現在の瞬間に意識を向ける
- 食事療法:低FODMAP食、栄養士の指導
- 運動療法:ウォーキング、ヨガ、水泳など
今日から始める3つのアクション
- 予備のパンツをバッグに入れる習慣を始める
- 男性用吸水パンツの情報をチェックする
- 外出先のトイレマップを作成する
小さな準備が、大きな安心と自信につながります
まとめ:安心を持ち歩き、自信を持って生きる
「もう一枚パンツを持っていく」という行動は、単なる物理的な準備以上の意味を持ちます。
それは、自分の体を理解し、適切に備え、コントロール感覚を取り戻すための重要な行為です。
重要なポイント:
- 予備のパンツを持つことで「何かあっても大丈夫」という安心感が生まれる
- 男性用吸水パンツは、さらに一歩進んだ対策として生活の質を向上させる
- これらの対策を「恥ずかしいこと」ではなく「賢明な自己管理」として捉える
- 医療的アプローチ、生活習慣改善と組み合わせることで効果的
最も大切なメッセージ
IBSは決してあなた一人の問題ではありません。多くの人が同じ悩みを抱え、それでも充実した生活を送っています。
適切な準備と前向きな姿勢があれば、IBSがあっても、仕事、趣味、旅行、人間関係など、人生のあらゆる面を楽しむことができます。
「もう一枚パンツを持っていく」――この行動を誇りに思ってください。
それは、自分をよく理解し、適切にケアし、前向きに人生を歩んでいる証なのですから。
不安を持ち歩くのではなく、安心を持ち歩く。

予備のパンツや男性用吸水パンツは、
その安心を提供する強力なツールです。
この記事の内容は一般的な情報提供を目的としており、医学的アドバイスの代わりになるものではありません。
症状が重い場合や日常生活に支障がある場合は、必ず医療機関を受診してください。
